前ソニー会長兼CEOだった出井氏がCEOだった10年間の苦闘と今後の出井氏の活動を綴った本だが、新書として約200ページで10年を綴るのには多少無理があるだろうと思いつつ、経営者としては一流であり尊敬に値する人物の本であるので読んでみた。
著書の中で勉強になった点を中心に。
コーポレート・ガバナンス
成功に彩られた組織というのは、どうしても過去の体験にしがみついていて、現状を冷静に認識しようとしないものです。
そうなのです。どの企業でもハマってしまう問題にソニーも陥る。ハーバード・ビジネス・スクールのジョン・コッター教授の論文の中で
①危機意識の確立
②強力なガイディング・チームの形成
③ビジョンの創造
④ビジョンの伝達
⑤ビジョンに向かって行動するよう全社員を奨励
⑥短期的成果の計画と実行
⑦さらなく改革の推進
⑧当たらしアプローチの制度化
の「変革のための8つのステップ」を提唱している。これはどの企業でも部門でも利用可能なアプローチ。頭の中に入れておきたい。
ソニー・アメリカのガバナンスについて
ソニー・アメリカの裁量でできることと日本本社の判断を仰がなければできないこと、つまり権限についてきちんと文書化しました。
ソニーのような企業においても、権限の文書化ができていなかった事に驚きを感じてしまう。創業メンバーのカリスマ性で引っ張ってきた会社だけに、コーポレート・ガバナンスはできていなかったという事のようだ。企業が大きくなるにつれて権限、責任などの文書化の作業が必要という事。
グローバル・スタンダードなコーポレート・ガバナンスはない
ヨーロッパを見ても、コーポレートガバナンスの形はさまざまです。資本主義が発達してきた歴史や産業構造、金融システム、労使関係などは、その国固有のもの。違う背景から成り立っている企業を、共通の仕組みで無理やりに統治するのはともても無理なのです。
グローバル・スタンダードとは言わないまでも、日本国内においても、企業それぞれで時代に即したコーポレート・ガバナンスを作り上げる必要があるという事。
経営者について
経営に妥協は禁物です。一度やると決めたら、ましてそれを表明してしまったら、どんなことがあっても実行しなければ逆に信頼感を失います。
その通りである。決めた事を実行しなかったりすると、次に何かを実行しようとしても、また途中で止めちゃうんでしょという空気が出来上がってしまい統制が利かなくなる。これは経営者や部門で実行責任を持っている人が絶対に犯してはならない事だ。
経営者の忍耐
モノを作るのには時間がかかります。人を集め、チームを作り、それが機能するようになって、ようやくいいものができます。そうやって機が熟すのを待てないで、初期の段階であっさりあきらめていては、プロジェクトは軒並み失敗に終わるに決まっています。短期的な途中経過に左右されることなく、長期的な展望を持って、自分の判断を信じ続けること。「忍耐」はCEOの重要な仕事だと思います。
CEOとかマネージメントは辛い仕事だとつくづく感じさせられる。他人に何を言われても自分を信じ続ける事。こんなに難しいことはない。自分が信じられるように常に努力をしなさいという事ですね。
と、いろいろ勉強になる事が多い本だ。ここには上げなかったが、他にも参考になる事も多い。出井氏の著書は他の2冊も持っているが、出井氏の本を参考にした施策を実施した事も数々あり効果を得られた事もあり、この本からも施策に結びつける事が出来れば700円の投資は安いものだ。
迷いと決断 | |
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出井 伸之
新潮社 2006-12-14 おすすめ平均 |
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