5月 04

「ドキュメント 長期刑務所」(美達大和著:河出書房新社)は、長期刑務所がどんなとこであるのかを著者の体験をもとに書かれた本だ。その内容は、大きく著者の「主観」により記載されたパートと「客観」により記載されたパート2つのパートで構成されている。この2つの構成で思ったことを書いてみたい。

このブログにしてはかなり長文になってしまったが、時間のある人は全文読んでいただければと。

◆「主観」

著者の主観で書かれた部分は、著者自信が刑務所生活の中で感じたことをありのままに書いている。

著者の文章を読んでいると、刑務所の生活とは、昭和30年~40年頃の庶民の生活感覚や社会生活と同じなのではないかと想像できる。昭和30年頃や、昭和40年頃というのは、現代と比較すると飽食でもなく社会のつながりが多かった時代だと思うのだが、刑務所の生活は、その時代の雰囲気に似ているのではないだろうか。

著者は

『美味礼賛』を著したサバランは、「空腹こそ最高の調味料」という至言を残していますが、その通り、10年を越えてからここの食事でさえ美味と感じる時もあるほどです。

刑務所に来て関心するのは季節感を大切にすることです。これは全国の施設でも同じ傾向にあり、季節の食べ物や果物を必ず配ってくれ、味覚で季節の移ろいを感じられるのです。

一年に1回、何だか七夕の彦星と織姫みたいですが、この希少性が通常の飢餓と強烈なシナジー効果を生み出し、食べた時の旨さは言語に絶するものがあります。
無いということが、こんなにも人の感受性や口福感を刺激することを始めて知りました。

私はこの刑務所が全てと決めて生活していますから、それ以上望まず、与えられた条件で満足しているために、幸せだと思っています。あるはずのないものを欲望のまま求め続けるよりも、あるものの中で楽しむことが大切だと考えるようになりました。数は少ないのですが、そんな想いを抱く人も何人かいるのです。無いという日ごろの生活が、喜びや感動を大きなものにしてくれることを10年を過ぎた頃から強く意識するようになりました。そのことは、犯罪者でありながら幸福のチケットをもらったようなもので、何だかいいのかな、不公平じゃないのかなと天に向かってつぶやいています。

と書いている。昔は、それほど豊かではなかったのだが、幸せを感じることは多かったのではないだろうか。

現代社会は、昭和30年~40年頃の日本の庶民生活に比較すれば、物質的にはかなり豊かになっていることは間違いないだろう。しかし、物質的な豊かさを追い求め過ぎた結果が、昔の日本人の良いところを削り取ってしまったという感じもする。

今、与えられている環境や制約の中で、幸せを感じることが大切であることを語っていると思うのである。

普通に庶民の食生活や社会生活の視点で現在(現代)の自分の生活と照らし合わせることで、自分の生活をよりシンプルに生きた方が幸福感があることを改めて思い知らされ、普段の生活を改善しなければと思う。

◆「客観」

「客観」的に書かれた部分は、刑務所の生活がどんなものかのか?という事実をいろんな視点で非常に解りやすく解説している。

刑務所の中の生活とは、もっと辛く厳しいルールがあり、その中で生活しているものだと思っていたのだが、法改正によって、自分が思っているほどではないことがわかった。アメリカの刑務所のドキュメント番組を見た事があるが、そのアメリカの刑務所の生活は、受刑者にもいろいろな権利?が与えられており刑務所とは思えないほどの自由があるように思えたのだが、その状況に似つつあるのではないだろうか。

そして、この「客観」の部分では、改めて刑務所の意味を考えさせられる。刑務所の意味や意義はどこにあるのだろうか。まず考えられるのは、罪を償うことだろう。いわゆる贖罪ということなのだが、この贖罪については以前の記事「人を殺すということはどういうことか」でも記載したので今回は割愛する。

次の意味は社会のルール違反をした人をルールを守れるようにする「再教育の場」として役割だろう。

この「再教育の場」としたとき、現在の刑務所の実体では、「再教育」が十分に行われていない点が問題だろう。

そもそも「教育」には金がかかる。「再教育」には、子供の教育に金がかかる以上に金がかかることは間違いない。子供の場合は、頭の中に概念形成が出来ていない為、新たな概念を入れ込むだけで済むが、大人の場合は、なんらかの概念が形成されている。その大人の頭の中に出来上がった概念を一度崩して、再構築や再構成させるには非常に長い時間とコストがかかる。

「再教育」のコストと「ルールを破る人」の発生確率とその「ルールを破る人」による「社会に与える影響」というコストのバランスで、「再教育」コストは決まるのだろう。

「社会に与える影響」というコストが「再教育」のコストを上回り、社会が「再教育」の必要性を認識したときに始めて、刑務所での「再教育」の費用が大きくなるだろう。

それまでは、現在の刑務所の更正という名の「再教育」は、今以上のレベルにはならない可能性が高い。

そして3つ目は「犯罪の抑止力」としての意味ではないだろうか。

この意味では、この本を読んでいると、この「犯罪の抑止力」が低下しているという印象を受けるのだ。本の中にも書かれているが、受刑者にもある程度の生活をする権利があるという考え方もあるが、程度の問題はあるかもしれないが、社会一般に認められている権利の制約は仕方ないことなのではないだろうか。そうでなけれは、罪を犯して「刑務所」に入って辛い生活をするのは嫌だということにならない。

自分を含め、社会一般の考え方としては「刑務所」の生活は辛いものだという認識はあると思うが、この本を読んでいると辛さが感じとれない点は、この本の残念なところだと思う。著者は、事実を書いているとは思うが、その事実の記載が逆効果を生んでいるように思われることは残念でならない。

全体を通して、第一作も、この第二作も著者の見識や知識の豊富さ・深さには感嘆する。自分もそれなりに本は読んでいるが、著者のレベルにはない。更に、読んでいる本が専門書に傾斜しておりもっと、多様なジャンルの本を読んでより豊かな人生を!と改めて思ったのだ。

最後に、このブログを読んで本を贈って頂いた著者に感謝を述べたい。ブログを読んで頂いたこと、本を頂いたこと、ありがとうございました。

ドキュメント長期刑務所 ドキュメント長期刑務所
美達 大和

河出書房新社 2009-04-10
売り上げランキング : 17761

Amazonで詳しく見る by G-Tools

  • ホテル
  • 航空券
  • 航空券+ホテル
1.行き先お選びください
2.日程・宿泊者情報を指定してください
  • チェックイン

  • チェックアウト


  • 部屋数

  • 大人

  • お子様(<18)

検索

Twitter やってます

Leave a Reply

*