いよいよ平成21年5月21日から始まる裁判員制度。この制度の対象の事件は、一定の重大な犯罪であり,例えば,殺人罪,強盗致死傷罪,現住建造物等放火罪,身代金目的誘拐罪,危険運転致死罪などだ(裁判員制度のサイトから引用です)だ。
そんな重大な犯罪を犯した無期懲役囚が長期LB刑務所で書いた「人を殺すとはどういうことか」は、二件の殺人を犯した著者がどう罪と向かい合い、どう気持ちが変化し、罪を償うとはどいうことなのかを描いた内容だ。また、我々が今後、裁判員制度で審判を下すであろう犯人達もきっと同じだと思うのだが、今の受刑者達の刑務所内でどのような気持ちで服役生活をしているのかを克明に描いてもいる。
まず、罪を償いとは、贖罪とは一体どういうことなのか考えさせられる。著者にも、まだその答えは出ていないと記しているが、その通りだと思う。人類の歴史が始まって5000年程度にはなるとは思うが、人類の歴史の中でもはっきりとした答えはない。人を殺めた罪と償いとは、難しい問題である。
被害者の関係者からすれば、死して罪を償えという気持ちもわかる。あたり前の感情であろう。現在の法制度では、著者のように極刑とはならず、無期懲役の場合もある。無期懲役の中で、罪と償いを一生考えて生きていくということもあるだろう。ただし、この場合は犯人が罪を認識している場合に限る。裁判員制度に限らず、裁判制度そのもので、如何に犯人に罪を認識させることが如何に難しいことなのかということだろう。
そして、この本のもう一つのテーマである、刑務所に収容されてる囚人達の様子を描いた面では、刑務所制度は一体何のためにあるのかと思ってしまうのだ。表面的に真面目に刑務所生活を送り、社会へ復帰していく受刑者達の様子を読むと、今の裁判制度や刑務所制度の限界を感じてしまう。
そんな事を含めて、人を裁くこと、罪を認識させること、罪を償うことが如何に難しいことなのか、改めて考えさせられる。裁判員制度で裁判員になるかもしれない訳だが、裁判員になるならないに関わらず考えなければならないテーマであることは間違いない。
人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白 |
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美達 大和
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河出書房新社の編集、茂木と申します。
同著者の近刊『ドキュメント長期刑務所』の担当をしました。
宜しければ、御連絡いただけないでしょうか。